熱量 1枚の絵画が放つLOVE STORY
第3章 白い砂漠
YUKIとの出逢い
1997年、香港が英国から中国に返還された。10年経って徐々に香港の中国化が顕著になる。 金融業は返還後の変革を見据えて、ロンドンに拠点を移した。
社会主義色の強い中国化を恐れ、欧米と肩を並べていた香港のカルチャーやエンターテイメントは台湾、シンガポール、カナダへ移った。
日本市場の拡張を狙うシンガポールエアラインの仕事で凛子はYUKIと出逢う。
ミステリアス&エキゾティックなアジアの魅力を発信しようと
「オリエンタルミステリー」をコンセプトにあらゆる媒体を占有する戦略だ。
香港から来日するチームと合流し、日本の都市を撮影。
コーディネーターとして、奏子、凛子が同行する。
目的は洗練された東京・古の都・京都、エキゾティックな大阪それぞれの魅力を撮影する。
ロケハンを兼ねての撮影スケジュールは1カ月、京都の紅葉に合わせて組まれている。
凛子はフレキシブルで外国人ならではのゆとりも考えたスケジュールを半年ほどかけて組む。
香港とロンドンからそれぞれ撮影クルーが到着。
リーダーは神秘的なアジアを欧米に浸透させた若き写真家YUKI、ディレクターのDONEでスタッフ総勢20名だ。
「RINKOさん、このスケジュールはあなたが組んだの。」
「はい。何か問題がありましたか。」
「いや、さすがJAPANESE。違和感や拘束感がなく快適なタイムテーブルに驚いている。」
「ありがとうございます。希望があれば何なりと。」
低いトーンの声、ブリティッシュイングリッシュ。真っ黒い瞳に細い鼻筋、美形だ。
いまブレイク中の中国人俳優陣のトップ10ばりの容姿に全身熱くなる。
「RINKOさん、アジアンな魅力だね。ボーダレスというのか。よく聞く日本人タイプではないね。」
「そうですか。確かに中国系の血は入っています。」
「俺は英語がラクだからこのままで。さっき香港のスタッフと広東語で話していたから。
携帯番号教えて。これが俺の番号。」
「YUKIのナンバーをゲットできるなんてすごいよ、凛子。」
「そうなの?モテモテの奏子さんが羨ましがるなんて。」
早速翌日凛子の携帯が鳴る。YUKIからだ。
「花火が観たい。」
「YUKIさん?早速手配します。人数は。」
「RINKOさんと。」
ディズニーランドの花火と高層ビルの夜景が美しい東京湾クルーズを手配する。
ついでに羽田空港から京浜工業地帯のコースを加える。
まるで宝石を散りばめたような輝きと、幻想的に浮かび上がる工場のシルエットがこの世のものとは思えないだろう。
「RINKO、素晴らしい。まるで黄泉の世界だ。」
YUKIはシャッターを押し続ける。
エンジン音と水飛沫、水面に映る夜景、夜空を彩る万華鏡の世界。
そして白いシャツをなびかせ軽快にシャッターを押すYUKI。
恋の予感がした。